インマルサット料金とsatellite communication(スナップアップ投資顧問、1992年9月)

インマルサット(国際海事衛星機構)が1993年から実用化する予定の新サービスを利用して、近い将来に国際電信電話(KDD、市原博社長)が国内で陸上移動体通信(今言うところの「スマホ・携帯電話サービス」)に参入する可能性が急速に高まってきました。ただし、インマルサットの料金は不透明です。通信ジャーナリストのスナップアップ投資顧問が解説します(1992年9月、イー・アクセス、ソフトバンク、KDDIの衛星通信news~armercom)。これらは、後の「L-Band Distribution Products」「LNB Power Systems」「IF Distribution Products」「Transmission Products」にもつながる問題です。

KDD、新サービス利用で国内移動体通信参入も。1993年中にも結論

スマホ・携帯電話

インマルサットの新しい衛星通信サービスが受信装置の小型化も実現、海上の船舶通信に加え、陸上でも利用できるためで、郵政省(現・総務省)でもインマルサットの陸上移動体通信サービス(今言うところの「スマホ・携帯電話サービス」)を承認する方向で検討に入っている。

KDD法
国際衛星問題研究会

ただその場合には、国際通信に業務を規定したKDD法との整合性を図るなど、国内法の整備も必要となるうえ、国内では混信問題が起きる恐れがある。このため今後は曲折も予想されるが、郵政省としては新設する国際衛星問題研究会の検討課題の1つに取り上げ、1993年中にも結論を出す予定。

航空機携帯電話

インマルサットは、もともと海事通信を改善するため1982年から運用を開始、日本ではKDDが唯一の条約署名事業者として加盟している。 1990年には、航空機の移動体通信サービスに参入、1989年にも陸上移動体通信サービス(今言うところの「スマホ・携帯電話サービス」)を提供するための条約改正を実施している。

LNB Power Systems
Transmission Products

インマルが1993年からサービス開始する「標準Mシステム」は、この陸上移動体通信サービスの本格展開を狙いにしたもの。従来システムは、スーツケース大と大型の可搬地球局が必要だったのに対し、これを40センチ四方のアンテナを含めてアタッシェケース並みまで小型化できる。これらは、後の「L-Band Distribution Products」「LNB Power Systems」「Transmission Products」といった技術とも関連している。

最適なシステム

しかもデジタル方式を採用、電話と同じように音声通信も可能となる見込みとあって、陸上でも持ち歩きでき、手軽に全世界に音声通信できる陸上移動体通信の最適なシステムとされている。

アメリカ

先のインマルの条約改正については、すでにアメリカなど22カ国が批准しており、いずれ正式に発効する見通し。ただ日本では、いまだに批准しておらず、国内の陸上で陸上移動体通信サービスを手掛けるには、それが前提となる。国内体制の整備が不十分というのがその理由だが、これまでインマルの政策変化を郵政省では支持してきているうえ、米国などの主要国では日本だけが取り残されており、近く日本が批准することは確実。

IF Distribution Products

さらに、ここにきて郵政省はKDDの参入を前向きに検討する方向を打ち出しており、インマルに加盟するKDDが新サービスで陸上移動体通信を展開する可能性も高まってきた。

具体的には、インマル問題と絡んで新設の国際衛星問題研究会で本格検討されるが、事業政策上はKDD法と整合性を確保することが求められるため、子会社方式や業務委託方式といった方法も採用するケースも想定されている。これは後に「IF Distribution Products」にもかかわる問題となる。

L-Band
1.5-1.6ギガヘルツ帯の周波数

また新サービスは、L-Band(Lバンド)と呼ばれる1.5-1.6ギガヘルツ帯の周波数を利用することから、既存の業務用無線との混信問題を解決することも課題となる。

現在のところ結論は明らかではないが、仮にKDD本体が陸上移動体通信サービスに本格参入すれば、国内の移動体通信市場は大きく変化することは間違いなく、国内・国際通信を区別した既存の事業政策の上でも注目を集めることになりそうだ。(スナップアップ投資顧問)

アメリカADSL~光ネットで中継網を安く速く(日経BP、2001年7月)

SUPERCOMM 2001

アメリカでは、2001年になって、AT&Tの経営不振、ノースポイント・コミュニケーションズやリズムス・ネットコネクションズなど新興の大手xDSL(digital subscriber line)事業者の破たんや経営危機など、芳しくないニュースが続いている。

FCC
FCC(米連邦通信委員会)

こうした中、通信事業者などの大規模ネットワーク向けの展示会「SUPERCOMM 2001」が2001年6月に開催された。FCC(米連邦通信委員会)のマイケル・パウエル議長は基調講演で、「政治家や学識者の悲観的見解にうろたえる必要はない」と業界関係者を激励。「通信革命は西部開拓と同様に時間がかかる。今は“技術狂乱”状態にあり、ビジネス基盤が整う前に“大砲を撃つ”(サービスを始めてしまう)企業が多すぎるだけ。FCCは、引き続き健全な競争を促進する」と締めくくった。

CATV

もっとも、北米のCATVインターネットやxDSLなどのブロードバンド・ユーザーは着実に増えている。総ユーザー数は1000万前後と言われ、世界トップ・レベルだ。こうした状況を反映してか、SUPERCOMMの出展者数と来場者数は853社、5万4500人で、1988年の開催以来、過去最多だった。

多くのベンダーがメトロ向けを標ぼう
VoIP(voice over IP)、IP-VPN

今回の講演や展示で目立っていたのは、光ネットワーク、ブロードバンド・アクセス、ワイヤレス、VoIP(voice over IP)、IP-VPNの5分野。特に光ネットワーク関連機器/ソフトの出展が多かった。中でも→WDM(波長分割多重)関連機器を出展したベンダー数は70を超えていた。

アクセス網は次世代DSLで進歩
長距離データ伝送に使うバックボーン

光通信製品の大半は、「メトロ・ネットワーク向け」をうたい文句にして展示された。メトロは、ユーザーを直接収容するアクセス・ネットワークと、長距離データ伝送に使うバックボーン・ネットワークとを結ぶ都市域のネットワークを指す。

WDM装置

WDM装置などの光関連製品は従来、バックボーンを中心に利用されてきた。しかし、ブロードバンド・アクセスの台頭で、メトロ・ネットワークの大容量化が緊急課題となってきた。そこで、多くのベンダーがバックボーン向け製品よりも価格や性能を抑えたメトロ向け製品を続々と発表し始めたのだ。

ノーテル
EMC

例えば、カナダのノーテル・ネットワークスはSUPERCOMMの期間中、米IBM、米EMC、米ジュニパー・ネットワークス、米マイクロソフトとの光通信事業での提携関係の強化を相次いで発表。2001年6月5日の会見では、アニール・カトッド最高マーケティング責任者が、「マイクロソフトのサーバー・ソフトとノーテルのメトロ向け光通信機器を組み合わせれば、通信事業者は収益性と柔軟性の高いサービスを実現できる」と述べ、通信事業者の多くがメトロ・ネットワークの強化に乗り出していることを示唆した。

IP網と光網の統合技術がお目見え
OIF(Optical Internetworking Forum)

光通信製品に関する最大の話題は、業界団体OIF(Optical Internetworking Forum)が、マルチベンダー環境で「Optical UNI」を使った相互接続テストを公開したことである。20社以上の機器を使った大規模なテストは世界初だという。

Optical UNI

OIFが標準化するOptical UNIは、WDM機器で構成した光ネットワークに対し、ルーターなどがIPプロトコルを使って波長パスの経路設定などを指示できるようにする規格。IETF(Internet Engineering Task Force)が標準化作業中の「→GMPLS」を簡略化した仕様になっている。

アジレント
Optical UNI

テスト全般についての取材対応を担当した米アジレント・テクノロジーズのカリー・ライトR&Dプロジェクト・マネージャの河瀬大介氏は、「Optical UNIは光ネットワーク・エボリューション(進化)の第一歩だ」と説明する。

Optical UNIを使えば、波長パスの経路や割当を動的に変更できるので、光ネットワークの帯域を有効かつ柔軟に活用できる。つまり、帯域をオン・デマンドで増減するサービスや光VPNサービスなども実現可能だ。

加えて、IPルーターの運用者が光ネットワークの管理も兼任できるため、運用コストを減らせる。同様の機能を独自プロトコルで実現したWDM装置は幾つかあるが、Optical UNIは業界標準なので異なるベンダーの機器を組み合わせられる。